〈第15回〉悩みはキャラクターで解決!

これでできる「大人のコミュニケーション」

これでできる「大人のコミュニケーション」

「人の印象の専門家」の吉武利恵です。

あなたは自分の自我(エゴ)を理解していますか?

感情、思考、行動の部分から、自我(人格)が形成されるといわれています。その自我状態を「見える化」する手法の1つが「交流分析」(Transactional Analysis)です。

交流分析はエリック・バーン氏(米・精神科医)が提唱した心理学パーソナリティ理論で、過去を重視する精神分析ではなく、現在を重視したオーソドックスな心理テストを用いた精神分析。コミュニケーションの癖をグラフ化する「TAエゴグラム」や会話を分析して本当の言葉の意味を探す「やり取り分析」、後味の悪いコミュニケーションから脱出する「ゲーム分析」などがあります。

今回のコラムは、交流分析を応用し、いくつかの印象をご紹介いたします。

C、P、A、あなたはどのタイプ?

人は誰でも心の中に3つの「私(自我)」を持っています。

これを「PACモデル」といいます。

PACモデルではまず、①P(Parent、親)、②A(Adult、成人)、③C(Child、子供)の3つのタイプに自我を分けます。さらに、観察できる行動(言葉、表情、ジェスチャー、姿勢)から自我状態に分類し、5つのキャラクターに分けていきます。

この交流分析、自分のキャラクターを知ることで悩みを生じにくくしたり、または生じた悩みを軽くしたりする参考になります。そして、今の自分の感情がどこにあり、相手の感情がどこにあるかを判断する指標にも使えます。

〈PACモデルの3タイプとは?〉

・P(Parent、親)<C(Child、子供)→C(Child、子供)が強いので「~してほしいタイプ」

・P(Parent、親)>C(Child、子供)→P(Parent、親)が強いので「~してあげたいタイプ」

・A(Adult、成人)>P(Parent、親)・C(Child、子供)→A(Adult、成人)は理性的な大人。感情の表現が少ないため、人と深い付き合いになりにくく、表面的な付き合いになりやすいタイプ

あなたは5つあるうちのどのキャラクター?

それでは5つのキャラクターをセルフ診断してみましょう。
5つのキャラクター簡易心理テスト

いかがでしたでしょうか?

今のあなたのキャラクターを知り、何を感じたのか興味深いですね。

キャラクターが分かったら「ここに注意しよう!」

では、ここからはセルフ診断で分かったキャラクターごとに、印象のバランスを良くするためのアドバイスを紹介していきます。

〈キャラクター別「印象をよくするにはどうすればよい?」〉

・CP(厳しい親:父)が高い人:NP(優しい親:母)を高め、相手の良いところを褒める。積極的に相手の話を聞く。相手の気持ちや感情に共感したり、思いやりの言葉を投げ掛ける。援助を申し出ることを意識することで、厳しい印象を弱めてバランスを取りましょう。

・NP(優しい親:母)が高い人:CP(厳しい親:父)を高め、自分の意見や考えを述べて自己主張をすることも時には必要です。A(理性的な大人)を高め、「つまり~ですね」と確認したり、「具体的には~」と物事に対して冷静な判断を意識することで、受け身の印象に自己主張ができる大人の印象をプラスしましょう。

・A(理性的な大人)が高い人:NP(優しい親:母)を高め、相手の良いところを褒める。積極的に相手の話を聞く。相手の気持ちや感情に共感したり、思いやりの言葉を投げ掛ける。援助を申し出る。そして、FC(自由な子供)を高め、喜怒哀楽の感情を口にしたり、たまには冗談を言ってみる。世間を意識し過ぎず、芸術、娯楽、空想を楽しむことにもチャレンジしてみましょう。相手を思いやる自己主張で、人と深い付き合いをするためのコミュニケーションにシフトしましょう。

・FC(自由な子供)が高い人:AC(従順な子供)を高め、相手に関心を持ち、相手の気持ちに配慮し、相手の意向を尋ねたり、相手に感謝の気持ちを伝えてみましょう。そして、A(理性的な大人)を高め、「つまり~ですね」と確認したり、「具体的には~」と物事を冷静に判断することを意識することで、自己中心的な印象を、相互コミュニケーションができる印象にシフトしましょう。

・AC(従順な子供)が高い人:FC(自由な子供)を高め、喜怒哀楽の感情を口にしたり、たまには冗談を言ってみる。世間を意識し過ぎず、芸術、娯楽、空想を楽しんでみましょう。そして、A(理性的な大人)を高め、「つまり~ですね」と確認したり、「具体的には~」と物事を冷静に判断することも意識しましょう。遠慮がちな印象から、大人の自己主張をプラスすることでバランスが良くなります。

ここで紹介した「5つのキャラクター診断」では、自分のキャラクターを知り、印象のバランスを良くする部分にフォーカスしました。ぜひ、意識して取り組んでみてください。

キャラクターを理解し、「ゲーム交流」で応用

では、次に対人コミュニケーションとして、相手がどのキャラクターでいるときに、こちらがどのキャラクターで対応すれば、後味の悪いコミュニケーションから脱出できるかに触れていきます。

ここでは、「ゲーム交流」を応用した印象マネジメントについて紹介をします。

ゲームとは仕掛けたり、仕掛けられたりして、勝ち負けを争うこと。仕掛ける側と仕掛けられる側が存在し、勝ち負けにより生まれる後味の悪い非生産的なコミュニケーションをゲーム交流といいます。そのコミュニケーションがゲームであることに早く気付き、脱出する必要があります。

(1)さあ、捕まえたぞ!ゲーム交流

相手のミスや弱いところにつけ込んで揚げ足を取ったり、弱いところを集中攻撃するゲームパターンです。

CP(厳しい親:父)がAC(従順な子供)を捕まえて攻撃をし続けると、後味の悪い非生産的な交流が長引きます。上下関係を大事にし過ぎると起こりやすいのが特徴で、最近、話題のパワーハラスメントがこの例です。

■ゲームを仕掛けられた側の「脱出方法」:AC(従順な子供)の協調性は素晴らしいことですが、遠慮し、相手の顔色をうかがった対応では解決できません。A(理性的な大人)のニュートラルな対応に切り替えて、相手と目線を水平に合わせ、メモを取ってみたり、冷静に事実確認をして、事実に基づいて論理的に分析することが必要です。ゲームを仕掛けている側がいくら声を荒げたり、大きな声で威嚇してきても、冷静さを保っているように見える努力をしましょう。

■ゲームを仕掛ける側の「背景と印象」:相手を攻めることで自分の強さをアピールする行動です。実はコンプレックスがあり、自分に自信がない人がやってしまう行動。もし、相手の弱みを攻撃している自分に気付いたら、攻撃を止め、A(理性的な大人)のニュートラルな大人の対応に切り替えましょう。攻撃した事実を素直に謝罪できる心の余裕で印象ダウンを防ぎましょう。

「仲間割れ」「世話好き」のゲーム交流にも注意

(2)仲間割れゲーム交流

自分を守るために、仲間割れを起こさせる非生産的なコミュニケーションです。巧みに相手にけしかけて、双方に争いを起こし、その隙に付け込み、自分が利益を横取りするゲームパターン。

例えば、Aさん、Bさん、Cさんがいた場合、Aさんがゲームを仕掛けて、BさんとCさんを仲間割れさせるために、BさんにはCさんの話、CさんにはBさんの話を持ち掛けて争いを起こさせるゲームです。

■ゲームを仕掛けられた側の「脱出方法」:事実を確認することで、正しい情報を得て早く脱出しましょう。

■ゲームを仕掛ける側の「背景と印象」:仲間割れをさせることで、自分との仲を深めたり、優位な立場に立つための行動です。しかし、ゲームを仕掛けられた側が事実を知ってしまったとき、印象は大きくダウンしてしまいます。信用や信頼を失う行動なので、無意識にゲームを仕掛けている自分に気が付いたら、すぐにやめましょう。

(3)世話好きゲーム交流

恩着せ、貸し借り、見せかけの援助で、後から巧妙に恩返しを迫り、相手の行動を支配したり、束縛するゲームパターンです。「あのとき、○○してあげたじゃない」と見返りを要求するゲームです。

「親切ごかし」という言葉があるように、親切にされると人は心を許しやすいので、親切らしく見せかけて、自分の利益を図りますが、真に親切心はありません。近年、孤独な高齢者を狙った詐欺事件もこの例に当てはまります。

■ゲームを仕掛けられた側の「脱出方法」:おいしい話に飛び付かないことが大切です。世話好きゲームも繰り返されるので、ゲームを仕掛ける人とはA(理性的な大人)のニュートラルな大人の対応に切り替えて、距離を置いて付き合いましょう。

■ゲームを仕掛ける側の「背景と印象」:「感謝されたい」「見返りが欲しい」「言葉を投げ掛けてほしい」など、満たされていない気持ちを埋める行動です。親切心を見せているときは、印象が良いですが、見せかけの親切だと気付かれたら、一気に印象はダウンします。

ゲームを仕掛けられてしまったら「早く脱出」

コミュニケーションの際に、ゲームを仕掛けてしまった場合は、すぐにやめることをお勧めします。そして、ゲームを仕掛けられてしまった場合は、ゲームからできるだけ早く脱出してください。どちらも、ニュートラルなA(理性的な大人)の対応にチューニングすることで回避できます。

日々の生活や仕事では、自分と違うさまざまな人と出会います。

何の問題もなく、スムーズな交流が取れる人もいれば、ごたついたり、揉めごとになってしまう交流もありますよね。そんなときは今、相手のキャラクターはどれで、自分はどれか、そして、どのキャラクターで対応すればうまくいくかを考えてみてくださいね。

最後まで、お読みくださいまして、誠にありがとうございました。日々の振る舞い、発言、行動の積み重ねが、あなたの印象をつくります。本来のあなたのポテンシャルに近づくために、印象で損しないために、ぜひ、印象のセルフマネジメントを一緒に意識し続けていきませんか?

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